マジな青春残酷物語 『桐島、部活やめるってよ』

観る気が120%なかった作品であるが、盟友・筧カントクの絶賛を受け
ものごっつう遠くの映画館に向かった。そして……恐れ入った。

かにかくに、「実感から来る絶賛クチコミ」ほど、誰かを劇場に
突き動かすものはないので、映画関係者は肝に銘じるべきであろう。
 

※四国の某地方高校のヒーロー「桐島」(最後まで姿はよくわからない)が、
ある秋の数日間、いきなり学校に来なくなった。それによって、クラスの人間関係が
じわーりと気持ち悪く動く。とは言え、スクールカースト最下層、
映画部の「前田」(主人公)にはそれは無縁と思えた。しかし……
 

過日の『おおかみこども……』もだが、日テレの作る「テレビの延長線上にない映画」の
底力を感じた(厳密に言えば作っているのは子会社のアックスオンだが、
あまりそこは関係ない)。全く他の局とは、違う。

配給も、大手ではないショウゲート。しかし、東宝の
『告白』だの『悪人』とかと比べても、あまりにも出来が、違う。
バジェットとかは関係ないんだよな。やはり「演出力」なんだよな、うん。

本作の吉田監督は50近いと聞くが、なぜここまで「高校のリアル」を作れるのか。
まさに驚異だ。
 

この映画、広義で言う面白さもないし、別に泣けもしないのに、
「日常の持つ恐ろしさ」を的確な演出で組み立てていて、
俺は心底「ゾッと」した。

観終わって数時間、いまだに寒気がする。
なんというかこういう映画は……忘れられなくなる。

なんだろうこの気持ち悪さ。たまらない。
 

なお、筧カントクは「泣いた」そうだが、俺は、泣けはしなかった。

俺はまさに、神木隆之介演じる映画オタク主人公「前田」に、リアルに近い高校時代で、
スクールカーストの底の底で自主映画を作り、体育の授業では顔面レシーブとかして
邪魔者扱いされてたし(ソックリなんである)、それを実は今も、必死で忘れようとしている
(いまだにあの頃の高校リア充は爆発しろ!とか思っている。同窓会があったという
話は聞かないが、あったとしても一生行かないだろう)。

そこをリアルに、この映画には見せつけられたから、ものすごい不快感を抱いた。実は。

目を背けてしまい、まともに観られないシーンがあった(実話)。
俺にはホラー映画なんですよ、十分。
しかし、だ。だからといってこの映画を否定はしないし、まさに絶賛に値するのは、
そこまでの「とんでもない描写力」は絶対的に認めざるをえないからである。

かつ、空気感がたまらん。舞台は四国だが、我が東北にも通じる
「田舎の秋が持つ空気感」がリアルに撮影されすぎていて、気持ち悪すぎる。
画面から「何かが、来た」もん。どうしてこれを表現し得ちゃうのかな!つうね。

田舎のボンクラに、は心底来る映画。すでにシネコンでは上映回数も減ってきてるし、
さしたる評判にもならなかったが、さてもこの晩夏、ご同輩はこの映画をゼヒ観て、
自分のトラウマと今一度向き合って頂き、吉田監督の才能に恐怖して頂きたい。

リア充な方も、まぁ、それなりに思う所はあるだろう。
懐かしいとでも思って下さい(笑)。
パートナーがいる方は、ぜひ一緒に見て、後で語り合って欲しいね!
一人だとキツすぎたよ、これは(笑)。
 

なお、群像劇ではあるが、個人的には一応「ヒロイン」の位置付けの、
前田敦子似オネーチャンより、なんか必死に片思いで、いかにも高校生っぽい
行動を取る「吹奏楽部長」のキャラが一番、キたなあ。
あれに比べりゃ、ヒロインにあまり意味はない。
あの子にこそ惚れるべきだ!と思う方となら、俺は友達になれる気がする。
こういうことを言える「キャラ立ちの良さ」は、うまい映画の、重要なファクターだ。
 

記憶から消そうとしていた我が高校時代を、無理矢理に
思い出させてくれやがった本作に、率直に賞賛を送りたい。

 

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