『大谷晋二郎デビュー20周年記念大会』

僕は、プロレスも延々と生観戦を続けてまして、
まぁそんなにデカい大会には行かん(行けん)のですが、
地元ならドサ回りからみちプロまで、東京だと後楽園ホールにはたまに行きます。

今回はZERO1の「大谷晋二郎デビュー20周年記念大会」に行ってきました。

プロレスファンというのも、ブームもとうに去った今や、天然記念物ですが、
そうですねぇ……20年とか生で見てますと、すごく達観できる部分がありまして。

あれは確かに、筋書きのある高度なショーではありましょう。
しかし、その裏にはリアルな人間関係があったりしますし、
何より「常人が絶対できないこと」をやって、下手すれば死人が出ます。
単純にスゴイと思えるから、まだ観続けているのだと思います。

さて、そんなボクがプロレスを観始めたその頃に、
まさにデビューしたレスラーに「大谷晋二郎」がいました。
当時はまぁ、レンタルビデオでホーガンとかのアメリカンプロレスを観て、
テレビで新日本プロレスを観る、とね。地方のプロレス民はそんなものですよ。

で、観始めて程なく、新日本の若手に、異常に殺気を持ってる奴がいる、ということに
気が付きました。それが大谷でした。

痩身で、コーナーからのミサイルキックを得意とし、客に媚びずに強く、
決して表情を緩めず、目線がきつく、とにかく憎たらしい若手。
ものすごく嫌いなタイプでした(プロレスラーとしては)。
しかし、何か目が離せなかったのです。この選手は。

嫌い嫌いも好きのうち、アンチ巨人は巨人ファンの裏返し。そんなもんかもしれません。

彼はそのまま新日にいれば、今の永田や天山のクラスにはおれたでしょう。
年俸だって、3000万ぐらいはざらだったんじゃないでしょうか。

しかし大谷は新日を去り、やはり同じく新日を追われた先輩・橋本の新団体ZERO1に、合流。
数年後、色々あって橋本と決裂……した矢先、なんと橋本は急死し、
一度消えた団体を立て直した。橋本の息子のデビューもお膳立てした。
そんな大谷が、20年です。

その間、苦労を重ねたであろう大谷は、イケメンレスラーだった面影はどこへやら、
激しく肥えて、同時に毛髪も激しく失い、江頭2:50ソックリだと言われ、
なぜか知らねど「ビッグマッチでは勝てない男」となり、
憎たらしいほどの強さを誇った、新日本若手時代のムードとは一変しました。
しかし、失われていないものもあったワケで、それが、異常なまでの「熱さ」です。

ZERO1という団体は、他に比べても「しょっぱい試合」が少ないと感じます。
何しろ、旗揚げ戦のオソロシイまでの神がかり興行は、いまだにプロレスファンの語り草です。
僕も忘れられないですね。

とにかくZERO1は観に行けば神興行に当たる確率が非常に高く、
盛岡のドサ回りですら好試合を連発しました。もちろん大谷の試合もしかりです。
落語家と同じで、こういう人は「観てて本物だと解る」のです。

そして、「伝わる」。
表現者たるもの、客に伝わらなかったら、負けです。
それをなし得ていたのが、まさに若手時代からの大谷の武器でした。
愚直にそういう感じでやってきたレスラーです。
なので、今でも「目の離せない存在」となりました。
 

今日は、セミファイナルの丸藤正道(NOAH)VS 橋本大地(橋本真也の忘れ形見)
なんてカードにもシビレました。

丸藤は、このZERO1の旗揚げ戦(11年前)で、いきなり禁断の
「新日本プロレス系の団体と全日本プロレス系の団体とが交わる」という
タブーが実現した時、場内が異常な雰囲気の中、若手として第一試合に出て、
ものすごい試合をやってみせた男です。
あれでいきなり作られた、場内のムードの高揚は、忘れられないですね。

それが、まさにその時の、相手団体トップ(故人)の息子と、戦う。

ちなみに、その試合の相手として名試合を共に見せた星川尚浩は、
後に試合の事故で全身マヒになり、今日は車椅子で会場の隅にいました。

橋本ジュニアの技の引き出しを全て出させて、なお勝った丸藤は、
試合後星川の元へ行って、何か話していました。
……こういう部分までもが「プロレス」なんだよなぁ。゚(゚´Д`゚)゚。
 

そしてメイン。
長い空白を経て、新日本の看板タッグチームとして、劇的に復活した天山・小島組「天コジ」に、
大谷は、まさに旗揚げ当時からの同士、田中将斗との、やはり名コンビ「炎武連夢」再結成で相対。

実はこれも……旗揚げ戦の各カード同様に、プロレス者的には「ありえない」ことでした。
再結成は二度とないと思われていた「天コジ」と、最近はほぼ見なくなった「炎武連夢」が
絡む時点で、どうかしているのです。

一緒に行った先輩(盛岡時代からの観戦同士)と「生きているもんだなぁ……」とタメイキを漏らしました。

試合はまさに、タッグマッチの教科書のような驚異的ハイレベルさ。
とにかく、今日の大谷には本当にやられました。

風貌は昔とは変わっています。しかし、あのいやらしい若手の時のような、
顔面ウォッシュにジャーマンスープレックスを出し、果ては、今や当時とは違い、
激しく太ったのにコーナーによじ登って、失われたかつての得意技、
スワンダイブミサイルキックまで繰り出す始末!

大谷は、天コジの大技フルコースを全て受けながら、最後はえげつない切り返しと分断で、
田中に3カウントを取らせました。

……非常に陳腐な言葉ですが、「プロレスラー」には、
長年やっているうちに試合にも「生き様」がにじみ出てきます。

大谷なりの20年が、まざまざと滲みでた試合でした。
本当に苦労したのだと思います。しかし己のスタイルは貫いてきたレスラーです。
こういうのを本当の「肉体言語」と言うのでしょう。

また神興行を観せてもらいました。感謝。

 

Facebook Twitter More...
Comments

No comments yet.

Leave a comment