「三K辰文舎」……天が二物を与えまくり

落語家バンドの「三K辰文舎」(さんけいしんぶんしゃ)を聞いてきました。
入船亭扇辰、橘家文左衛門、鈴々舎わか馬(現・柳家小せん)が、
高座名から一字ずつをとった「辰・文・舎」に、
3人の本名のイニシャル「K」を合わせたシャレなんですが、
それで本当に産経新聞社が後援についたという面白さです。

 
いや……最初は高をくくってたんですよ。

ですけどね。やられました、完全に。
余技とか鹿芝居みたいなもん、などとは言えないなぁ。これは。
 

僕は、落語好きということにはしてますけど、
まぁ、つうても一介の客ですから、高座での
噺家さんの姿しか、知らないワケです。

今日も、前半は普通の落語会で、3人が一席づつかけました。
大変上手い3人です。全員が寄席でトリをとれます。

扇辰師匠の風貌なんて、失礼ですがまぁ、ご覧くださいな。


これが本寸法の噺家でなくて、他の何なのか、という。
 
 

ところがそんな師匠連が、後半になると、こんな感じです。

私服というか舞台衣装というか、で出てくる3人を観て、
明らかに僕の脳は戸惑ったですね、最初。

メガネにキャップ、短パン姿になった扇辰師匠のエレアコやピアノのプレイは
どうにも普通のミュージシャンにしか見えず、
「さっき観た、短髪の人がやった江戸の長屋のやり取りは、ありゃ何だったのだ?」と。
 
また、小せん師匠の声質やギターの構え方は、さだまさしを思わせて仕方なかったですし、
文左衛門師匠のパーカッションはワイルドでありました。
 

このトリオが何曲もやって、オーラスは男声カバーで『ルージュの伝言』(!)を
かましてシメだったんですが、いや……とことん参ったでありますよ。
誤解されそうなので書いときますが、これ「コミックバンド」じゃないんです。
 

「オリジナルがねぇんです。誰か作詞して下さい(笑)」と扇辰師匠は言ってたものの
(ちなみに師匠の奥方は作詞家です)、
いや、こりゃフォークやニューミュージックの男声カバー解釈としても、抜群に面白いですね。
徳永英明が女性ソングカバーでボロ儲けする前から、恐らく師匠たちはこの活動、やってますもん。
CD出してないだけで。
 

そりゃまぁ、「プロのミュージシャン」に比べれば劣るでしょう。
けど普通に「落語が上手」な上に、
こんな(別な芸で観客が金を払うレベルに達する)ことあんだなぁ、実際に……と、思いましたね。
 

まさに、天は二物を与えたり。
どういうことなんだろうな、これは……と、終演後しばらく考えていたんスけど……
「あぁ、そうか! 『落語』はある意味『仕事』だから!」と気が付きました。

僕らは客なので木戸銭も払うし、どうしてもアーティスト的に『落語家』を観ていますけど、
それは彼らには「極めるべき職業」ではありましょうが、やはり第一義としては飯の種で、
それ以外に特技やすごい趣味、があったって何ら不思議はないんですよね。
 

で、思い出しました。

僕は昔のある時期……もう90歳近いのかな……。
先代・林家三平のブレーンでもあった、大ベテランの落語家・三笑亭笑三師匠と
知己を得て、文通的なことをしていたのでありますが……。

この師匠、映像作品をバンバン作り、イラストの腕は玄人はだしという方でした。
毎回、手紙にさらっと添えられたカットに、唸っていましたね。

思えば、落語家と言っても、書の達人はいる、画家もいる、俳人もいれば
ライダーも旅人も。「城評論家」もいますしw 小説家もエッセイストも。
舞踊の名取もいれば映画監督もいるし、劇作家も舞台俳優もおります。
鶴光師匠のように、ラジオの喋りで一世を風靡した人もおりますね。
あと、新作落語を作る人はストーリーテラーでなきゃならんですしね。

笑福亭鶴瓶師匠とか、タレントとしか認識してない方も多いと思いますけど、
普通に上手いんですよ、落語。
あの方は「TVタレント」としての才があった。そういうことです。

だから、「ミュージシャン」がいても全くおかしくはないんですよな。
 

閑話休題。

「楽しいことを真剣にやると疲れんの!(笑)俺は舞台も最近までやってたから、
落語こそ久々なんだから」と文左衛門師匠は笑わせましたが、
僕が最初に文左衛門師匠を聞いたのは、それこそ某寄席のトリでして、
「ウメェなぁ!この師匠!」が率直な感想でしたからね。

そういう人が、しばらく「その他が忙しくて落語から離れる」こともあるんですから、
面白いものです。
 

とにもかくにも、落語家をただ「一芸を求道するアーティスト」みたいには
思わない方がいいな、それは盲目的な落語信者の思い込みだな、と、少し反省しましたね。

たまに、同僚が実はすごい副業とか趣味を持ってた、みたいなことって
サラリーマン社会でもある訳ですけれど、逆に往々にして「ただの仕事人間」は
あまり面白くないワケでして、それは落語家さんとて同じ、なのでした。
 

得意ジャンルがあるならば、「仕事の」落語だけじゃなく、
どんどんそっちもやっていく。場合によっては客にも披露する、のが
あるべき落語家のスタイル、なのかもしれないですよね。

 

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