進化する金髪豚野郎

横浜の放送ライブラリーで、「クイズ面白ゼミナール」を観てきた話を
先日書きましたけど、そのゲストが、若き日の春風亭小朝でありました。

30年前の番組であります。

氏が当時から今日まで「落語の天才」の称号まんまにやってきたのは、ご案内のとおり。
 

ただ、どうもそのウマさが逆に鼻につく所もあったりしましたよ。
10年ぐらい前だと思いますが。

ウマすぎるので、トチ狂って武道館公演してみたり、
まぁ、落語ブームが来る前でしたから、業界全てを一人でしょって立つ気で
カラ回りとか、そういうヘンな部分がありました。
 

昨日、久々に生で聞きました。春風亭小朝。
そしたら驚いた。いい意味で吹っ切れていたのです。
 

落語家は時として、進化したり退化したりするんですよ。

人間国宝だった柳家小さんの孫で、柳家花緑っているでしょう。
僕はあの人は、名ばかりで、本当にド下手くそだと思っていた。
ところがね、最近聞いたら上手くなっていたんですね。

逆もある。三遊亭好楽(笑点のピンク)の息子、王楽。
初めて聞いた時、すっげぇ上手いと思った。
ところが、最近聞いたら、明らかにダメになっていたんです。
そういうこともあります。まさに人間がやる芸なんすから。
 

で、久々に聞いた「生小朝」は、まぁ、このエントリのタイトルにしましたが
あの「金髪豚野郎」を発した語源の元カミさんの……つまり林家一門との腐れ縁をね、
うま~くマクラ(落語本題の前のトーク)に絡めて、(今の)林家三平と最近の水戸黄門をイジってみたり、
その三平や、先の花緑、王楽じゃないですが「二世落語家」たちを、競馬の血統と絡めて皮肉ってみたり。

(立川志の輔師匠もそうですが「二世三世じゃない」天才型の落語家は、
「血筋」には、ものすごいルサンチマンがあって、そこを皮肉ることがあります。
小朝って、もしかしてそういう部分の裏返しで、わざわざ泰葉と結婚した……
林家一門の血筋に入ろうとしたんじゃないか、という穿った見方もできるのですが、
その呪縛がなくなってから、本当に変わりました)
 

落語やお笑いをナマで聞いたことある方は解ると思うんですけど、
芸人がノッた時って「絶対にテレビじゃ、まずくってやれない」毒ネタを、
これでもかこれでもかとカマしてきて、それがことごとく面白いんですよね。
関根勤の芸能人批判、いわゆる「裏関根」なんか、本当に面白いですもん。
 
で、昨日の小朝がそうだったんですよ。
前はヘンに上品でそういう話をしない部分もあったんですが、完璧に変わりましたね。
 

人は50超えても、成長していくのです。
天才に成長というのはおこがましいですが、天才が成長するから、恐ろしい。

落語界は裾野が広がって、30代40代の才人がガンガン出てきましたから、
ここに元祖「天才」の意地を見た。そんな気がしましたね。
 

三席聞きました。

大ネタや人情噺は捨て、
「愛宕山」で単純に笑わせ、
「試し酒」で、サラッと「田舎者の酒飲み」表現の上手さを見せつけ
(この噺は、ヘタクソがやると最高に演技過剰でつまらないもんです)

得意ネタ「扇の的」(リンクはニコ動)は、「華麗すぎる下ネタの山を、
全く間を作らずに流れるようにぶちかます」という、生でしか聞けない逸品でした。
(ていうか、よくテレビで演った映像が残ってましたね! 談志の番組だからか?)
 
素晴らしく笑いました。
 

落語ってのはね……「最初に生で誰を聞くか」が、すごく大事なんですよ。
そこでヘタクソにあたると、こんな退屈で笑えない芸なんか一生聴かなくていいや、になっちまう。

僕の場合の最初は、小2か小3の時、あまりに学校図書館から落語読み物しか借りてこないのを
心配した親父に連れてってもらった、先代の円楽でありました。

あの人は他の笑点メンバーと違って、ドサ回りでも手抜きをしなかった。
「ドサ回りでも手抜きをしない」は、重要なファクターですよ。
本当にすごいと思いましたね。あの一発ではまった。
以来今日まで聞き続けてるワケです。
 

そういう意味では、もうとにかく何か話題を作ろう、落語界を俺が引っ張ろう、という呪縛から
完全に解き放たれた今の春風亭小朝は、落語初心者の方にも、「最初に生で聞べきく一人」として
オススメできます。
 

え~、他にも「落語家、誰を聞くべきか」ってのは、お教えできますので、
どうぞお尋ねくださいネ。

 

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Comments

すばらしくわかりやすいエントリーでした。私はまだ落語を聞いたことないのですが、クラシックもロックコンサートも同じで、「生」は超一流から聞かないとダメなんですよね。なんだか突然、文体が変わったかのような印象で、スラスラ読めました。この路線、断然支持します。

アニキご愛読感謝! そりゃ、読ませるというのを意識しますと、mixiとは変わってきますよ……
東北弁と標準語を使い分けるがごとくね。
落語の券はいっぱい買ってるから、今度お誘いします!

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