『トラさん~僕が猫になったワケ~』

(……たけし調)
長さがいいな。90分! これ、古き良き日本のプログラムピクチャーの伝統の尺なんだ。今の映画ってのはさ、何が2時間半とか3時間だっての。膀胱が破裂するよ! そんなの客に失礼だろってこと、最近の映画関係者はわかってないんだよな。そしてあれらは、監督に技術がないから「切れない」んだよ。短い中に物語が終わるから、映画はいいんだ。ダラダラ観たいなら連ドラだけを毎日観てろっての。

 
90分で映画を収めるにはどうしたらいいか? そこに映画の「粋」が出る。つまり省略の美学ってやつでね。映画をかじった人ならわかると思うんだけど、映画には「はしょっていい部分」があんの。そこは見る側が頭で補完できるように、本来はちゃんと作られてたんだよね。
 
 
映画の伝統のモンタージュ技法とか、カット割りってのには、そういう意味がある。けどね、頭使わない奴にはわかんないよ、これ。全部説明しろってことになる。まぁ、そういう向きはまさに朝ドラ昼メロ大長編韓ドラだけ観てりゃいいんだけどさ。これがきちんとできてないと、90分で話は「落ち」ないの。

 
「神は細部に宿る」。人間の目は優秀だから、いろんなディティールで手抜きや矛盾があると、そこは目ざとく見つけちゃう。で、話に入り込めなくなる。そこへの目配りも要るしね。
 
 
で、いざこの『トラさん』が始まったら、完全に映画の中に入っちゃった。途中で余計なことを思い出さなかった。それは、映画好きとしての一つの判断基準になるんだけど、これは掛け値なしにそれが出来てた映画でもあって。

 
まぁ、ありていに言えば、みんな「ジャニーズアイドルが着ぐるみで出るファンムービー」だと思ってんだろうけどさ。偏見をまずは捨てようっての。途中からそういうの一切気にならなくなるから。コレ本当。そこはやっぱり、監督の技量なんだな。

 
大体、アイドル映画ってのはそれこそ、清く正しい邦画の歴史なんだよ。大森一樹の吉川晃司映画、たのきん、聖子、角川三人娘。古くは美空ひばりから、クレイジーキャッツにドリフ、吉永小百合、小林旭、裕次郎……枚挙に暇がない。言わば邦画は何だってそう。そういうフォーマットの中で、傑作が生まれてるんであってさ。 

 
だから、まずはわずか90分、観てみようって。これは温故知新、邦画の最新アップデート版なんだぜ。映画好きとか自称してる奴は、まず観てから何か言おうじゃないかっての。ジャンジャン!

 

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Comments

素敵な記事をありがとうございます。
この作品に対して偏見の塊だった人に読んでもらうことで意識改革に繋がりそうです。

小気味良くて、楽しく拝読しました。
そう、そう!そうそう!と。
わたしは、ジャニーズファンじゃない、大人が観たら、良さを感じることできるだろうなぁと思いました。わたしは、北山くんの大ファンなので、この映画作品の良さに気づくのに3回かかりました。

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