『萬公演Vol.2』

「manzo」氏をご存知であろうか。
「日本ブレイク工業社歌」の人といえば、ピンと来る人は来るであろう。

その他、アニメの曲など、数々のキャリアがある。

この名義での活動10周年記念のライブを、パイセンと鑑賞した。
純粋に、生で聞いてみたかったのである。
 

……4年ほど前、オリジナルアルバム「大役萬」が出た時、

小生及び、本日チケを取ってくれたパイセン、足すこと2名の音楽マニア、
のべ4名はこれに大変驚愕し、大いに盛り上がった。

単に「パロディーアニソン、特ソンが上手いシンガーソングライター」
という認識は、この時、完全に破壊されたのだ。

言っちゃ悪いが「ニコ動によくいる人」程度ではない、
歌詞のセンスと作曲の実力を見せつけられて、度肝を抜かれたのである。

当時、我々は「山本正之の後を継げるのは、この人しか、いねぇ」と、
よく話していた。
 

そして、何年もたって今回ようやく、本人の生歌&演奏
(ライブ活動が極端に少ないので)を聞く機会を得たのであったが……

機会が少ないはずである!
今日のMCでもってカミングアウトされたのだが、氏はイロモノでも何でもなく、
本名「坂下正俊」なる、いっぱしの職業作曲家であったのだ。

 
しかしながら、あの社歌の文字通り「ブレイク」で、
manzo名義の顔出し活動を始めてから、氏は「こねくり回す音楽ではなく、
お客さんの顔が見えたので、喜んでもらう音楽」を志向しはじめたのだという。
これは非常に興味深い。

えてして「作り手」は、「受け手」の顔が見えない。
それが「見えた」時、何か考えが変わる、ということは十分ありえると思うのだ。
 

氏が見せつけた実力は、客席を驚愕させるに十分すぎた。
アルバムどころの話ではなかった。

幅が広すぎるのである。
いわゆる声優ソング、また客を乗せまくるためのアニメ主題歌や、
いかにも特撮主題歌然とした曲……と思えば、ロック、フュージョン、
コミックソング、フォーク、歌謡曲まで……なんでも飛び出した。

「こねくり回す」を捨てた、とは言っても、1曲の中での転調や
激しいペースチェンジは得意とするところで、ラップまで組み込む有様。

本人のボーカルも本職の歌手以上に伸び、楽器はギターも鍵盤もこなす。
また、バックバンドも全員実力者で(Keyが渡辺チェル氏なのにはビックリした)、
今回はコーラス隊やホーン・セクションまでいたもんだからして、
小生は13年前……ブレイク前夜、初めて見たクレイジーケンバンドのライブを
想起せずにはおられなかった。このテクニック感や何でもあり感が、そう思わせるのだろう。
 

更に驚いたのは、ワンマン弾き語りのバラードで、ここが真骨頂だった……と
今にしてみれば思うのだが、例えば「母校が都市計画で壊された」であるとか、
「帰省していないからたまには帰ろう」という、まぁ……普通話を、キーボード一発で、
客に「涙を流させる」までに持っていく。これは、すごい。
 

予想に違わず、manzo氏は、ライブでも、とてつもないテクニシャンであった。
MCも破綻なく面白く、本当に職業作曲家の余技なのか? と思わせるほど。
もう、名義をこちらだけにしてもいいのではないか、と。
 

良いモノを観た・聴いた後は、居酒屋の反省会も弾む。
我々の結論としては「CD音源以上にライブ向きのテクニシャン」
「実は山本正之の後継者では、なかった」であった。

もちろん……このジャンルのオーソリティーとしての山本正之氏はすごいのだが、
良くも悪くも、全てが「山本節」として帰結していく氏と比べた時、
「変幻自在に過ぎる」manzo節は、全く別種の可能性を持っていると思える。

アニソンや特ソン(のパロディー)を得意とするのは、
「そういう曲が作れてしまう」からなのである。

もちろんジャンルとして、そこを突き詰めてもらうのもアリ
(というか今まではこちらもそれを望んでいた)なのだが、
実際に生で聞いて「どんなジャンルでも行ける」人であるという思いを抱いた。
 

機会さえあれば、定期的に聞いていきたい人ができた。
山本正之、というよりは小林亜星的な存在になれる人……なのかもしれないですよ、
manzo氏は。

 

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