そしてとうとう……伊奈かっぺい

何とか仕事に道筋を作り、伊奈かっぺいの東京公演を聞きに。

kappei

思い起こせば確か1985年。彼のライブを収録した市販「カセットテープ」の
あまりの面白さ、頭の回転の速さ、キレ具合に、小生は打ちのめされた。

東北弁使いでこんな面白いトークマスターがいるのか、という衝撃。
しかもカタギの地元リーマン(放送局のテロップ描き)だという二重の衝撃。
この人は、和田アキ子と全国波番組を持っていた時ですら、「東京に通って」いたのだ。
 

当時、我が親父が、地元公演の券をもらってきた……。
だが、俺はその公演当日に、何かで親父を激怒させ(ディティール失念)しこたまぶん殴られた挙句、
当然ながら親父は、俺を伊奈かっぺいライブには連れて行かなかった。
 

そのまま、四半世紀が過ぎた……今、会いに、行きます!
トラウマ払拭&自分に影響を与えたリビングレジェンドは絶対に見ろ! は、我が信条。

半日休暇を使ってまで@下北沢。
満員の会場に、かっぺい氏は、相方の津軽三味線奏者・山上氏と現れた
(この方も、名前だけはよく聞いていた)。

あぁ、ついに本人を見た。なぜ今まで邂逅がなかったのか。
俺はずっと東北で、あんな仕事もしていたのに。
 

65歳。さすがに立ち姿は悪くなり、昔のように「歌う」というシチュエーションもない。
マシンガントークも、若干もつれるようだ。
しかし、そこはそこ、落語家ならピークの年代である。
「喋るセンス」は衰えない。30でメジャーデビューして35周年、だそうだ。
最近出したCDが、32枚目(!)。頭の回転はそのままだった。

そこには、往年と変わらぬ、四半世紀前にテープで聞いた、
「あんなネタ、こんなネタ」が、あった。しかも新しい。
 

彼のスタイルは、「脈略ない津軽弁時事漫談」といって良い。

「昨日、由紀さおりさんのディナーショーに呼ばれてね。
青森で一番立派なホテルでね。3万5000円! 今日は……幾らさ?」

「由紀さんとはNHKのドラマで共演しましでネ、その時、三戸のリンゴ農家の役だったの。
……解る? 津軽弁と南部弁は違うのよ、全然。
……だから、このワダシに『方言指導』がついたんです!(大爆笑)」

「もう年金生活なのサ。何十年も『13日の金曜日』にライブ続けてきたのだけんど、
それというのも『25日の給料日』という後ろ盾があってのことなのよネ。
俺はプロの芸人じゃなかったんだから」

「自慢じゃないけど、無遅刻のサラリーマン時代。
……タイムカードに『書け』ばいいんだもの。そういう仕事してんだから」
 

氏を知らない方のために更に言えば、ネタの感じは
綾小路きみまろとかに(今で言えば)近いだろう。

例えば、
「街で私のライブのポスター見たら、絶対来たほうがいいヨ……
もうハァ、最後になっかもしんないからね。
……俺じゃないよ? 皆さんがヨ?(笑)
……全部こっちのことだと思っちゃ、いけないよ~」

こうした、客イジリ毒舌とかもあるからね。
しかし、圧倒的なきみまろとの実力差は、ナマで見ればひしと感じる。

なぜなら、この人は「同じ鉄板ネタ」を話さない。
さすがに今はノートを見ながらではあるが、昨日今日の話題もいじる。
そこらへんは初代・林家三平あたりにも通じると思っているのだが。

あと、絶対に「しんみり」はさせない。
そうできる持ちネタやエピソードもあるが、絶対そうはしない。
これが「安心感」になる。

視点は徹底的にひねているが、風貌と語り口がそれを感じさせない。
「何か気になることあれば、ノートに書けばいいの……何でもいいのっさ。ソレで長生きするから」

ダジャレも含めて、常人が言えば多分寒くなるネタも多い。しかしこの人が話すと、全て爆笑になる。
間のとり方とリズムが、完全にプロなのは言うまでもないが、かつ津軽弁でくるむことで意味が変わる
(東北弁と標準語は、同音異義語が多い)ので、二重三重に笑いを含む。

そういう意味では、もしかしたら完全に東北人向けにカスタマイズされた笑いなのかもしれないが、
……いいじゃないの別に。お笑いは関西人のものだけじゃ、ないよ。
 

メインネタは、日々テレビで見たバカなことに入れた、ツッコミ。
テレビにツッコミ入れてると長生きするよ、あれと会話しましょう、と。

「カレーのCMを見たら『それ、ウメェのがぁ~?』ってさ」

「テリー伊藤が『おくいらせ』って言いやがった。画面叩いたね!」
(……解りますか? 「はちまんたいら」と言うのと同じです)

「歯磨きのCM知ってます? 『女子アナは見られる仕事だから……』だって。『喋る仕事』だぞ、バカ」

「最近、グルメリポーターが『やわらかいですね』と『甘いですね』しか言わない。
漬物食ってソレ言ったら、婆さんはきっと言うヨ? 『あいや、漬けるの失敗しだべが』」

そこにお得意の「ハイレベルな津軽弁ダジャレ」、
「津軽弁と南部弁の違い」(せんべい汁なんか食ってるからだ! とディスるw)、
「ことわざや慣用句の『矛盾』を突く」ネタを織り交ぜ、ケーシー高峰ばりに白板も使う。

小生は昔から、彼の「努力は積み重ねるから、崩れる」という、もじりネタが好きだったのだが、
同様に今回も、「故郷に飾る錦なんか、ない。だって俺は故郷を出ていないから」
「目に入れても痛くないのは、せいぜいコンタクトレンズまでだね」
「七転びは『七起き』 そうでしょ?」などが次々と。

あまりに下らなくていちいち覚えていないがw これは彼の信条で、
「面白かったが、帰るときには何一つ覚えていない」のがいいのだ、と。
それでいいんです。まさにカンコンキンシアターとかもそうなんであるが。
 

もちろん、ずっと津軽弁で話してはいるのだけれども、
最後に、彼のネタの真骨頂「鼻濁音の話」と「短縮形」へ。
CMネタに使われる何十年も前から「フランス語と津軽弁の類似点」を指摘していた人であり、
「あ゛い゛う゛え゛お゛」の発音は北東北人にしかできないことを指摘。

「けど、それは永六輔さんは気に入らないようでネ。『オマエは訛ってる!』と(笑)
……私の仲人なんですけどネ」

「大根は標準語で『だいこん』だけど、北関東で『でーごん』になって、
こっちまで来りゃ『でご』になる。つまり俺らは3種類の言語を理解でぎでしまうワケ」

そして、津軽の酔客の「酒場トーク再現」をマシンガントークでぶちかまし、
本来の持ち芸である「方言詩」をかまして終了。
 

2時間弱、見事であった。
「方言は会話の中でこそ、しっかり出る」説は、小生も常々思っていたことなのだが
(だからその気になれば完璧な標準語でスピーチもできるが、
地元での会話となれば南部弁と伊達弁のミクスチャーに逆戻りなのである)、
それを今回かっぺいさんもハッキリと言った。我が意を得たりだ。
 

そして、何より、この方の話を聞くと「トウホグ弁語っでて、ナニが悪ィっでや」という気分になる。

芸人でもない一般関西人が、驚くことに本気で「東京で方言を消しもしない」のに対し
(基本、あれは怖い言葉だからハッタリきくからね……。でも、それは違うぞ。
『標準語』ってのは、田舎者の集合体である東京で、円滑に会話するためのツールなんだから)、
長いこと東北人は、それを「笑われる」ことだけを気にして、東京在住時においては、矯正に努めてきた。
 

……そういや、昔、あるところの圧迫面接で「君、東北人ならさぁ~、なんか東北弁で
面白いことぐらい言ってみろよ!」と言われたことを思い出したんすけど。
あいつ、もう死んでればいいな~。
 

閑話休題(笑)
まぁ、矯正に励んでしまったのは俺もなんですけど。
でも、今更ながら感じた。別に恥じるごどは、ねぇなや!
多少ではあるが「普通に使うか、東北弁」と思えた。
そして、青森生まれの先輩と、また飲んで方言で語りたくなった。
 

かっぺいさんありがとう。四半世紀の胸のつかえは取れました。

7月に清瀬で次回があるみでだがら、まんずまだ、笑いさ行ってみんべがな。
ほにほに、かっぺいさんよりオラが先に死ぬがもわがんねもんな。

 

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