『カラフル』に邦画の良心を見た

映画マニアは皆「気づいてるけど言わない」ことなんですけど
(バブル崩壊を直視するのは、気分が悪いからだ)
ゼロ年代に入って「邦画」は死にました。
テレビドラマの続編が、「邦画」です。

邦画の本来持っていた特徴とは。

SFXとかスケールはハリウッドにかなわなくとも、
日常の機微をしっかり描きとるのが得意で。
当たり前の風景をも的確に切り取る技術があって。
小道具にすら手を抜かないディティールの美を持っていて。
何気ないセリフ回しの妙技があって。

それが・・・辛うじてアニメの中で生きていました。
原恵一監督の新作『カラフル』です。
http://colorful-movie.jp/index.html

フジテレビ映画なのに、宣伝皆無。
サンライズ作品なのに、バンダイほぼ無視。
そんな作品である。

しかし、この映画、
かなり早い段階から、自分の周囲で、信頼できる大勢が大絶賛していました。
その大部分が、プロのクリエイター。
つまり、同業者たちが認めたのですね。
加えて、明らかに現在は原監督のライバルであろう細田守監督までが、
「アニメーション映画の未来を信じる者なら、絶対に観にいくべき作品だ。」とまで
ツイッターに書きました。

ここまで言われて、観ないワケにはいかないでしょう。

で、驚きました、なんだこれは。
「実写の邦画が失ったもの」が、このアニメには全てあります!

「邦画がテレビドラマの続編になった」今、伝統と技法にのっとって、
真っ当な演出で邦画を創りえるのは、実はアニメ監督だけ、らしいです。

その中でも「木下惠介や小津安二郎的な古き良き日本映画の良心を一身に背負ってる」のは、
アニメ監督の中でも原恵一しか、いないのかもしれないです。

シンプルな線で描かれた登場人物の表情が、かすかに不安で曇る瞬間、
観客は確実に何かを感じ取ります。これが、正統な「邦画のテクニック」なのです。

根底を流れるテーマは、いじめ(自殺)。家庭。人間関係。
本来とことん重いものですが、それをあくまでファンタジー交え、嫌味なく見せます。
この脚本技量もまた、正統。

ラスト30分間、涙が止りませんでした。
膨大な量の映画を観てきた自分にして、初めて。
人目をはばからず、号泣でした。
(挿入歌は反則です。はしだのりひこの「風」、
アンジェラ・アキの「手紙」、
そして、ブルーハーツ「青空」(カバーですが)は卑怯でしょう!)

主人公が、苛烈ないじめや精神的ショックを受けながらも、
(このへんの描写は大人向けでエグい。もろにトラウマをえぐられます。
なのに・・・目を背けられないのはナゼなのか? これもまた演出力です)
文字通り「生き返っていく」様を見ていると・・・

「そうだよなぁ。人生、なんとかなんじゃねぇかなぁ」と、ハッキリ思えるのです。

普遍的ながら強烈な「蘇生」の物語。
声高には叫ばないが、突き刺さるメッセージ性があります。
また、何が善で何が悪だとか、そんな単純な道徳レベルで作られた作品でもないです。

映画にもし何か「力」があるのだとしたら、こういうことなのではないでしょうか。
この映画には「力」があります。

邦画は、そして「日本のアニメ」とやらは、原恵一によって救われるかもしれません。

そこまで、言います。敢えて言います。

 

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